カヤバ株式会社様

カヤバ株式会社では振動制御技術とパワー制御技術の2つのコア技術に、電子制御技術などあらゆる要素技術を組み合わせ、研究所や各事業、グループ会社が連携し、技術・製品開発に取り組んでいます。また、今日では避けて通れない環境問題をはじめ、社会課題の解決やSDGsゴール達成、DXによる生産革新への取り組みと新規ビジネス創出への対処にも目を向け、活動を進めています。今回油圧機器との置き換えを目指す電動アクチュエータの試作及び評価を行いました。
Purpose
近年、燃費と整備性の向上を目的に航空機装備品の電動化が積極的に進められています。
しかし、電動アクチュエータのボールスクリュに起因するジャミング*が障害となり、脚系統・操縦系統などのクリティカルな部位では、油圧アクチュエータが使用されています。カヤバ株式会社では電動化に対応すべく、ジャミングレスを特徴とする円筒型リニアモータを用いた電動アクチュエータを開発しています。円筒型リニアモータの現状の課題は、油圧機器と比較して質量推力密度(推力[N]/質量[kg])が低いことです。本プロジェクトでは、大推力のリニアアクチュエータを実現する高推力密度なアクチュエータの試作とその性能評価を行います。具体的には、磁場解析を活用した設計のとおりの発生推力を実機確認するとともに、従来試作で発生したさまざまな課題の解決を目的としています。実機での検証には、モータを評価するベンチシステムが必要ですが、今回のリニアモータ(5kN)に適合する安全で且つ効率よく試験できる既製品の直動モータ評価ベンチシステムは市場で販売されていませんでした。そこで、ラピッドコントロールプロトタイピング(RCP)によるリニアアクチュエータ評価試験環境を整備し、実験を行いました。
*ジャミング:ボールスクリュ、減速機等の嚙み込み現象で、冗長系を構成する航空機用途では障害となる
MIS Solution
ハードウェアによる検証の前にPC上で、モータ及び制御アルゴリズムのシミュレーションを実施しました。モータではリニアモータの推力増加・軽量化・誘起電圧等のモータの特性をシミュレーションし、制御アルゴリズムでは加振側油圧シリンダと試作アクチュエータの評価試験における制御定数の妥当性評価しました。また解析ソフトウェアは、モータについてはJMAG®、制御アルゴリズムはMATLAB®/Simulink®を活用しました。実機での評価試験のコントローラとしてはSEAGULL®を採用しました。導入した理由は以下3点です。
  • 旧型モデルのMIS社製コントローラiBISを採用していた実績があり、制御モデルの資産を有していたため
  • 豊富なI/Oラインナップと充実のチャンネル数を活用し、複数のインバータやセンサ等を接続した状態で、モデル上の切り替えのみでシステム構成を変更することが可能
  • DIO-PWM出力ボードを用いて、定格容量50kVAのインバータのゲート信号を直接駆動することが可能
Goal
I/Oブロックのみの変更で、iBIS使用時にMATLAB®/Simulink®で構築した制御モデルが動作し、既存モデルを流用することができました。実機動作・評価環境構築の時間を大幅に短縮できたことで、制御部の改良やノイズ対策などリニアアクチュエータ・リニアモータの開発・評価に注力できました。さらに、Pass/SEAGULLは、動作中の内部値を参照しながら同時に定数の変更も可能であるため、定数変更機能を用いて1,000パターン以上の評価試験を数週間で実施することができました。SEAGULLはI/O数が多く、デバッグの際にとても強力なツールだと感じており、現在も継続的にSEAGULLをプロジェクト研究のため、使用しています。本リニアアクチュエータの量産時には、同システムセットを出荷検査機器として採用する可能性があります。
MathWorks® Products
  • MATLAB®
  • Simulink®
  • MATLAB Coder™
  • Simulink Coder™
  • Control System Toolbox™
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